機能空間からリゾート空間へ(Serenityを求めて)
ライフスタイルを提案する
住宅を創っていて、私が何に重きを置いて、設計を進め、現されていく空間を見て監理に夢中になったりしているのだろうか、想い返せば私の世代は、新しいライフスタイルが可能な空間の提案を行い、そこにあるべき新しい生活のシーンをイメージさせることに力を注いできた。
それは、例えば核家族が住まうに必要な機能を超えて、もっといろいろな人が関われる社交的な世界である「ゲストの空間」を併せ持った家づくりでもある。
家族が使用するには広すぎる、吹抜のあるリビングやダイニング。ホームシアターやバー、ジャグジーやスイミングプール、ジムなどの身体のケアーと娯楽のためのスペースづくり。
もちろん、庭には、水盤や蓮の花が咲きみだれる池、壁泉などの水の演出を試みながらバーベキューコンロを組み込んだ広い屋外デッキをつくり、夜がふけるまでのパーティーなどもイメージされた。
個人の世界の拡張として、トリッキーな秘密の部屋「リトリート」であるアティックの空間づくりなどは男の好奇心を引きつける逸材でもあり、趣味に埋没できる独立したアトリエ風空間やライブラリーも主人のパーソナリティが表現され、個性ある家になった。このように私たちにとっての住宅は、生活を限りなく拡張させてくれる器だったはずだ。家族の安心と安全の意味を超えて、もっと広い世界に至る入口づくりに似ているのではないか。こんなことにプラン上の工夫をこらし、居住性の面に配慮しながら行ってきたのである。
セレニティを求めてつくること
いま、海辺のリゾートホテルの計画を手掛けてみて気づく事は、「もてなされる空間」「癒される空間」というジャンルの空間に目を向ければ、改めて、住宅の「リゾート性」がいかに大切かがわかってくる。住み手が「もてなされ」「癒される」ことが、ライフスタイルの提案にもまして、大切だというわけだ。
建築家として改めて、この空間の質をどうつくっていくか考えれば、それは、「静けさ」の世界に到ることがわかってくる。「Serenity」(晴朗、静穏、落ち着き)の概念について、「ルイス・バラガン」は「苦悩や恐れを見事なまでにきれいに解消する力がある。」と言っている。これは正に、「癒し」や「もてなしの空間」に通じている。
今は、常に、セレニティが感じられるような住宅を創ることがこれまで以上に建築家に課せられている時代だとも言っておこう。それは、ハイコストなものでもローコストなものでも同じである。
私は以前、住宅は「森の中」に似ていると言ってきたが、想い起こせば、ずっとつくってきた、私の住宅は、常に、「セレニティ」を達成するべく努力してきた。この「セレニティ」は、形や色、素材やディテールを濫用するとすぐ壊れてしまう(やかましい家になってしまう)やっかいな奴なのだから。
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